笑顔が報酬!
私は「おもちゃのQキュー病院」のドクター
菅原 策夫・・・・・・
  おもちゃ病院のボランティア活動に携わり丁度五年
になる。サークル名は「おもちゃQキュー病院」創立21年
目の歴史有る団体だ。
  定年後、スキー仲間の紹介でおもちゃ病院を知り入会
した。私は現役時代、家電製品の修理をしていた経験が
あり、その技を生かせるボランティアだと思い挑戦する事
にした。
  「おもちゃのQキュー病院」の歩みをご紹介しよう。20年
間で6,000件強、年平均約300件のおもちゃを修理して
いる。完了率は何と95%を超えている。すごい団体だ。
  修理に取り組むドクターの皆さん
運営は僅かな助成金と会員の会費で賄っている。修理は原則無料、使用した部品代金はいただき、全てボランテ
ィアで行っている。
  ボランティアの趣旨は、おもちゃの殆どが修理して使う事を前提に作られていない為、修理の体制が整っていな
い。何でも壊れたらすぐ捨て、新しい物を買い与える事が助長される時代に、お父さんお母さんと共にお子さんに
直して使う、物を大切にする心や科学すを伝えて行きたい。又、環境にも優しい「省資源」への取組みともなる。
一方、私達ドクターにとっては壊れたおもちゃを前に使い方や動作を観察して修理する「知的ゲーム」といってもよ
い。直った時の喜びは爽快だ。
  現役時代の経験と技を生かして、社会に貢献し、生き甲斐や健康づくりに大いに役立つ活動だ。活動は、地域
区民センターで週一回、お客様からおもちゃをお預かりし、入院カード(入院しま証)と診断書を作成し管理しながら
修理をさせていただいている。部品はメーカーやインターネットで探したり、「全国おもちゃ病院協会」等と情報交換
しながら対応している。ドクターは地域のシニア世代12名が集まり、電気回路、メカニック、樹脂の加工や接着、ぬ
いぐるみの縫製、木工等得意とする分野に磨き抜かれた経験や知識を出し合い、助け合って進めている。
  私は電気回路を担当させていただいている。最近のおもちゃは多様な機能を持つ物が多くなっている。ICが組
み込まれた物、ギヤの組み合わせで複雑に動く物、記憶装置が内蔵されている物、様々なセンサーが組み込まれ
た物等、私達ドクターを悩ませるおもちゃが多い。しかし、壊れたおもちゃを大事に抱え「直るかなと?」不安そうに
持って来る子供達の顔を見ると何とか、直してやろうとファイトが湧く。
  直って持ち帰る時の嬉しそうな顔や「ありがとう」と弾んだ
声に癒される。ここでドクターの技をご紹介しよう。
  内蔵のICが壊れた時は、機能を少し変えて電子回路を
新しく作ったり、100円ショップ等の安いおもちゃから基板を
取り出し入れ替え、何とか遊べるおもちゃに作り替える事もあ
る。又、プラスチックのカバーが壊れて無くなっている時は、
木を削って型枠を作り、練り合せプラスチックでカバーを作
って、色を塗って成形加工する。手が込んでいる修理もある。
電動ぬいぐるみのおもちゃでは、足や手が折れている事が
多い。木やプラスチック等で添え木を作りビスで止め、ボンド
 お子さんからの可愛いお礼状と修理が完了したケロロ軍曹
で補強する外科作業も有る。知恵を絞りながら挑戦している時が心地良く、直った時は達成感と満足感がある。
  最近は一人暮らしのお年寄りや介護施設の担当者が記憶装置内蔵のぬいぐるみを持って来る事が結構ある。
ぬいぐるみに話しかけたり、挨拶をしたり、お年寄りの生活に溶け込んでいる様子だ。壊れると寂しい。何とか早く
直してほしいと言われる事も増えている。殆どが手や足のスイッチやセンサーのリード線が切れている場合が多い。
直って持ち帰る時の喜ぶ顔は何とも言えない。ドクターも一緒に満足感に浸っている。何か現代世相をつくづく感じ
る。又、こんな事もある。想い出のオルゴールをどうしても直してほしいとか、子供や孫に自分達の使ったおもちゃを
直して使わせたい等、想い出や思いの詰まったおもちゃを預かる事もある。古い物なので素材が弱っていたり、元
に戻せなくなったりする事もあり、壊しては大変だ。特に失敗の無いよう気を使う。直ると本当に喜んでいただける
のだが、直らないとがっかり落ち込む姿が心を痛める。ドクターはお客様の「笑顔」が報酬、喜んでいただく姿に満
足し、次の壊れたおもちゃに挑戦する。
  私は今、素敵なボランティア活動「おもちゃのQキュー病院」に巡り合え、シニア生活を楽しんでいる。これからも
一つひとつ丁寧に診断し、難しい故障へ知恵を絞って挑戦したい。洋友会の皆様へ!壊れたおもちゃが眠ってい
ませんか?直して使ってみませんか?全国各地には多くのおもちゃ病院が有ります。「日本おもちゃ病院協会」の
ホームページを検索し、地域のおもちゃ病院に相談してみてはいかがでしょうか!